ブログ:Update イノベーション・ドライバーズ
企業における事業ポジションの「次元シフト」についてです。前回ブログと同じマップを使います。これを少し動態的に眺めます。
AもBも、例えば前記したERP、CRMなどは、20年くらい前に先進ツール、コンセプトとして主流に伸し上がってしばらくはITトレンド、その現場業務の生産性向上領域をけん引してきた訳です。しかし今これらは、最先端のDX型プロダクツという位置付けとはされない。市場が成熟化しているからです。つまり、いまのCやDも、一部ですでにそうなりつつあるように、いずれはあって当たり前の時期が来ましょう。人工知能(AI)然り、プラットフォーム型事業モデル然りです。そして、遠くない将来、今のC、Dの次世代としてのEやFの主力となる製品サービス、事業モデルの輪郭が明確になってきましょう。ここでは、AからDまでの現状事業展開ドメイン全体が、CからFというドメインに移る、事業ポジションの次元シフトです。今でも、EやFに相当しそうなモデルはいくつかあり、AIは引き続きその中核をなしながら、読者の皆さんも各々の事業領域で思い当たる内容があるでしょう。
事業ポートフォリオの4象限プラス整理マップ
(プロダクツ
開発軸↑)
次世代 E: 次世代汎用展開 F: 次世代フロンティア展開
先進 C: 先進DX型 D: 先進DX型の拡張市場展開
既存 A: 非・既存DX型 B: 非・既存DX型の横展開
現状のコア顧客・市場 拡張領域の顧客・市場 (顧客市場開拓軸→)
足元に話を戻して、現時点では、上記マップのAやB的な製品サービスをほとんど持たずC、Dのみで事業展開出来ている先行的企業群はまだごく一部です。ただ、そのような企業群に通じる2つの流れがあります。一つは、事業コアがコンシュマー主導であること。もう一つはデータ常時接続のソフトウェア主導、それに起因するソリューションやサービス系展開で固めていることです。次世代モデルを考える手掛かりに、この辺りを少し整理してみます。
「コンシュマー向け」については象徴的には、大手リーディング企業ではGAFAMが元々に足場が完全にその典型ですが、少し視点を変えて、下記の世界のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場スタートアップ企業)上位リストを見てください。モバイル系、Eコマース、フィンテック、SCM、データ解析等です。件数では分散系ブロックチェーンによるWeb3の流れも含むフィンテックが目立ちます。これらの急成長企業群の主要なモデルは、よくみると、世界中の個々人向け、そしてデータの常時接続です。決して、お客様個々(一人一人、一社一社)にプロダクツ説明する訳ではない、独りでに「流布」していく中身ばかり。BtoB取引で相対取引に長く馴染んできたきた人間(私自身がそうです)には、そんな単純なことが、このリストを見せられて今更思い知らされる感があります。
List of unicorn companies
ByteDance China Beijing Contents delivery for mobile
SpaceX United States Hawthorne Space
SHEIN China Shenzhen E-commerce & direct-to-consumer
Stripe United States San Francisco Fintech
Klarna Sweden Stockholm Fintech
Canva Australia Surry Hills Internet software & services
Checkout.com United Kingdom London Fintech
Instacart United States San Francisco Supply chain, logistics, & delivery
Databricks United States San Francisco Data & analytics, AI
Revolut United Kingdom London Fintech
https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies
そして、いきなり「世界中の個々人向け」の製品サービス提供とは行かない通常の機器システム・サービス系企業にとって、押さえるべき点が2つ目の「データの常時接続」です。それを支える前提には1つに5Gに象徴される通信インフラは勿論ですが、ここで確認したいのがソフトウェア主導(software defined)、それに起因するソリューションやサービス系であるという点です。そこの具体的な中身が、「ビジネス暗黙知の可視化、共有化ツール」で、戦略投資も絡めてデーター視点そしてITベンダー視点で述べた項目群です
(「双方向での製品サービスの高度化」A, B)。いまみると、そこでのリストは、本格的にプラットフォーマー化する以前のGAFAMや上記のユニコーン企業群とは違うBtoB視点、メインストリーム市場での、事業成長・発展戦略の一翼と改めて思えてきます。
そして、問題の次世代のE、Fの領域は何が担うかについては、私も整理未了ですが、上記した2つのうねり(①事業コアがコンシュマー主導であること。②ソフトウェア、ソリューション・サービス主導)は、確かに念頭に置きたいところです。そこに、ここでの議論と別次元の固有の先進技術・コンセプト革新の流れも加わるでしょう。
(注) このような4象限的分析では、米国の経営学者であるH.I.アンゾフの「企業戦略論」(Corporate Strategy)(1965年)が勿論有名です。縦横軸取りがここでのVertical, Horisontalとは違いますが、戦略的事業計画に関するさまざまなコンセプトが盛り込まれていて、経営学の古典です。
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