イノベーション・ドライバーズ   

 

自動運転、安全運転補助                                                                      氏家 豊

 

  ますます注目度をます本テーマについて、最近、日米で、その現状の展開に触れる機会がありました。

4月上旬、シリコンバレーのマウンテンビュー市にあるComputer History Museumに立ち寄りました。当地におけるこれまでのコンピュータ開発に関する展示に交じって、自動運転のコーナーがあり、最新のGoogle自動運転車も展示してありました。今や、車もコンピュータの域に達しつつあると言うわけです。

 

 車体の上に黒いもっこりのセンサーがあります。説明書きには、「レーザー、レーダー、カメラ」とあります。具体的には、赤外線レーザーレーダーやミリ波レーダー、そしてビデオカメラ等となりましょう。「内部インテリアは、運転(driving)用ではなく乗車(riding)用にデザインされ」(従ってハンドルなし)、「蓄電池で動き、自動運転用にコンピュータが仕組まれて」います。「丸みを帯びたフォルムは、センサーによる探知野を最大化するため」ともあります。それ以上の詳しい説明はありません。また、別途の走行説明パネルには、もっぱら高速道路の図での説明になっています。

  

 米国では、当カリフォルニア州でレベル4(注1)の自動運転車を規制する法案がカリフォルニア州運輸局から提出され、その後、より上位の米国運輸省は、「自動運転の人工知能はドライバー」であるとレベル4を容認する見解を示しています。現在、通常の市街地での運転走行テスト中です。Googleの本拠地であるこのマウンテンビュー市の中心街で遭遇しました。完全に他の車両に交じって走っています。すぐ後ろを関係者車両と思われるのがフォローしていましたす。

  

 この米欧、日本での自動運転プロジェクトで目指すべきこととして分かりやすく掲げてあるのが、下記、日本の内閣府資料(内閣府「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システム 研究開発計画」)の目的項目です。  

① 交通事故の低減

② 交通渋滞の緩和

③ 環境負荷の低減

④ 高齢者等の移動支援

⑤ 運転の快適性の向上

 

 今年1月、世界で初めてオランダで、公道においてレベル4相当の無人バスの試験運転が開始された、との発表がありました。それまでは、レベル4目的の試験車両でも、公道走行時にはドライバーが必ず必要であったのが、これはドライバーなしでの公道走行でした。日本政府は、レベル4の自動運転の実現は2020年代後半を目指すとしていましたが、オランダのこのような動きもあり、日本においても2020年にレベル3の自動運転車の実現と平行して、レベル4の無人タクシーの運用開始を目標とする事を発表しました。

 

 他方、宮城県仙台市で、被災地復興も兼ねて、自動運転の実証実験に取り組んでいます。東北大学未来技術共同研究センター(NICHe:ニッチェ)が主導で、トヨタ自動車グループほかと、共同開発を展開中です。本プロジェクトは、自動車という既成概念に捉われず、また、海外のような高速道路等での安全走行に加えて、むしろ、次世代の移動体システムとして、特に、積雪・凍結・寒冷などの悪条件下での走行や、過疎高齢化、さらに震災復興という地域特有のテーマも加えた諸課題を解決するアプローチ、社会システムとして取り組んでいます。個々の基盤・モジュール技術に留まらない、むしろ、上記のようなミッションのもと、また文理融合での研究、人材育成を掲げています。その実績から、平成27年に自動走行・自動飛行等の近未来技術の実証に積極的に取り組む仙台市「ソーシャル・イノベーション特区」が地方創生特区第一弾として国から認定されました。

 

 直接プロジェクトを中核で推進されている一人のNICHe副センター長の鈴木高宏教授にお話を伺いました。

「本学技術に加えて、外部の要素技術との融合を伴った社会システム構想志向です。いまやっているのはドライバーがいるレベル3で、まだレベル4は壁が高い。2020年を一つの節目には考えていますが、特に我々が目指す地方での本格普及はもっと先を見据えています。①天候との悪条件下での走行技術、②高齢者や運転中アクシデント(意識障害、低血糖など)への対応などは特に意識しています。最先端というよりは、安定性・信頼性ある技術を使うことが優先。特に『ラストワンマイル』での自動走行というコンセプトを念頭に置いています。つまり、幹線の、長距離区間は既存ないし次世代の公共移動体で、最後のワンマイル(自宅周辺)を自動運転的な移動体にゆだねる。例えば、先頭車両は人が運転して(隊列走行)、そこに合流するまでの単独自動走行と組み合わせる。また、運転中の体調異変への対応部分では、予兆を把握するモニタリング技術とも融合させます」。

 

 このように、特にGoogleが先行する”自動運転”(Self-Driving Car / Autonomous Vehicle) 発想(注2)を、如何に国内、身の回りの問題に引き付けて、持てる技術と融合させていくかがポイントになりそうです。殊に、センサーで周りを探知すべき反射対象物がない田舎走行、高齢者が多い過疎地域での農道走行などを思えば、常識的に考えて、冒頭の交通量が多い市街地や高速道路とはかなり違ったシーンになります。80歳台の高齢者でも車を運転せざるを得ない、その人口も今後急増しましょう。いや、運転し続けることがポジティブライフの中核にもなっています。

 

 つまり、完全自動化を目指す過程で、より安全な運転のための補助技術が一つずつ充実していく、ということ。そう期待します。そして、特に地方を想定した今後の解決すべき課題から出発すると、レーザーやレーダー、カメラでの周辺探知型に拘らず、さらに市街地向け、高速道路向け、地方・田舎向け、そして悪条件・災害時向け等で、基盤技術やコンセプト発想自体も分けた取り組みも今後必要になり、実際増えて行きそうに思います。この部分は、日本がリードしたいところです。

 

注1:自動運転レベルの定義確認

レベル1
加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う状態。自動ブレーキなどの安全運転支援システムによる。
レベル2
加速・操舵・制動のうち複数の操作をシステムが行う状態。アダプティブクルーズコントロール(ステアリングアシスト付き)等がこれに該当する。ドライバーは常時、運転状況を監視操作する必要がある。

レベル3
加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときはドライバーが対応する状態。加速・操舵・制動を全て自動的に行うシステム。通常時は、ドライバーは運転から解放されるが、緊急時やシステムの限界時には、システムからの運転操作切り替え要請に対して、ドライバーは適切に応じる必要がある。事故時の責任はドライバーとなる。日本政府も2020年までに、このレベル3自動運転車の実用化を目標としている。
レベル4
完全自動運転。加速・操舵・制動を全てドライバー以外が行い、ドライバーが全く関与しない状態。安全に関わる運転操作と周辺監視をすべてシステムや外部に委ねる。有人、無人両方がある。

 

注2:Google以外の、特に日本を含む内外自動車メーカーは、”自動”というより”安全”運転向けの補助技術として早い段階から取り組み、今後も軸足はそこにあると思われます。

 

 

 

 

 
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