イノベーション・ドライバーズ   

 

産業オートメーションシステム                                                            氏家 豊

 

 IOTやインダストリー4.0の流れで、工場やプラントにおけるコンピュータ制御、データITコントロールが改めて注目度を高めています。産業オートメーション領域の半導体デバイス・システムに関して、以下のような流れがあります。元々、米国資料から起こした内容ですが、専門用語も多く、各々、解説も参照ください。

 

 元々、工場での製造工程、つまり産業自動化・オートメーション市場は、米国でも、軍事産業に次いで保守的、かつ慎重な市場と言われてきました。これには、次のような理由があります。(1) 自動化設備は、一般的に投資回収期間延長につながる、(2) 設備の交換は、通常、一番避けたい重大な生産停止につながる、(3) 純利益につながる強力なメリット、例えば製造労働力削減、材料廃品節約、サイクルタイムを削減等がなければ、旧式自動化設備からシフトする必要性を感じない。

 

 それにも関わらず、本市場ではこれまで、基礎的な監視・制御テクノロジー発展につながる様々な変化を遂げてきました。半導体集積回路の導入によって、自動化設備は小型化され、その消費電力も削減されてきました。他方、コンピュータのデータ処理能の向上で、工業設備制御・監視においても前例のない高性能化および柔軟性を実現し、多くの労働集約的な日常作業を自動化してきました。通信ネットワークやプロトコルは、個々に制御されていた設備の各部分を1つにまとめ、分散制御システム(DCS)(注1)の概念を導入。実際、TCP(Transmission Control Protocol) (注2)やLAN (ローカルエリアネットワーク)プロトコルは、自動車製造業、特に1980年代初めには既に製造フロア全体の自動化手段としてGMによって推進されてきました。

 

 監視制御データ収集(SCADA: Supervisory Control And Data Acquisition)システムは、計測データの制御および監視システムです。産業制御システムの一種であり、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行います。「これをパソコン上で構築するためのツールがSCADAソフトウェアです。従来、監視制御システムは高価なハードウエアと一体化しており、メンテナンスも煩雑だったのに対して、SCADAソフトウェアを利用すれば、制御項目や監視データ項目を任意に選択可能」(三菱電機)。ユーザーはインターネット/イントラネットにログオンし、Webブラウザベースのクライアントを利用して製造プロセスを見れます。ユーザーの認定レベル、セキュリティ、インフラ制約(例:帯域幅)に応じて、システム担当者は、遠隔地からでも、パソコン、携帯用ラップトップを使用してログオンし設備の特定部分や製造工場全体の運転を監視し、運転をリアルタイムで円滑に進めることができます。

 

 データ収集は、よくスマートグリッドでも使われるRTU(Remote Terminal Unit:遠隔端末装置)や、PLC(Programmable Logic Controller)制御装置(注3)のレベルで行われ、そのデータは必要に応じてSCADAシステムに送られます。ここで、監視室のオペレータが上記のような形でそのデータを見て監督的決定を行います。データは、普通のデータベース管理システム上に構築された履歴システムにも送られ、傾向などの分析に使われます。

他方で、スマートなマイクロセンサーやマイクロアクチュエータというデバイスがあります。マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)が、単一半導体チップ上で、従来からのCMOS集積回路と結合した形です(注4)。工業制御システムの全く新しい時代を切り開くものとして注目されています。この新たなレベルの集積化は、ほかのセンサーと共に、ネットワーク化された小型センサー/アクチュエーターを工場他の製造プロセス制御器に提供します。これにより、極めて柔軟性が高く、大量生産では費用効果も生む、分散型であってかつ階層的な製造プロセス制御体系が実現します。将来の工場は、エネルギー/原材料供給に依存するのと同じくらい、このようなハイブリッドな極小半導体デバイスに頼ることになると言われています。

 

 これまで、工業自動化に使用される半導体デバイスの量は着実に増加してきました。遠隔Webベースアクセスを備えた、このSCADAのような応用は、より工業用途に適したパソコン、高耐久性ラップトップ、パームコンピュータといった新製品を生み出し、それらがさらに、産業オートメーション市場における半導体需要を確実に拡大させてきました。工業制御応用におけるMEMS利用は、引き続き、半導体の新たな需要開拓をもたらすと期待されています。

(注1)分散制御システム(DCS):制御システムの一種で、制御機能が中心に1つあるのではなく、システムを構成する機器ごとにあるもの。それらの制御機能装置はネットワークで接続され、相互に通信し監視し合う。工場の生産システムなどによく使われる。

 

(注2)TCP(Transmission Control Protocol) : インターネット・プロトコル・スイートの初期からある2つのコンポーネントの1つで、もう1つは Internet Protocol (IP) である。そのため、スイート全体を一般に「TCP/IP」と呼ぶ。World Wide Web、電子メールなどの主要なインターネット・アプリケーションはTCPを利用している。

(注3)PLC(Programmable Logic Controller): 小型のコンピュータの一種で、中枢には他のコンピュータと同様にマイクロプロセッサが使われ、ソフトで動作する。工場などの自動機械の制御に使われるほか、エレベーター・自動ドア・ボイラー・テーマパークの各種アトラクションなど、身近な機械の制御にも使用されている。

(注4)MEMSとCMOS集積回路の融合に関する参考専門文献:https://www.ieice.org/jpn/books/kaishikiji/2010/201011.pdf

 

 

 
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