イノベーション・ドライバーズ   

 

 

DX型の製品高度化、ソリューション化、プラットフォーム化    2020.5.18

                                                                                                                        氏家 豊 

 

 機器システムの製造業者、その意味での「メーカー」にとっての競争力形成を整理します。以下では、前回ブログ「DXのデータ価値連鎖的な意味」で掲げた4項目中のⅡ(ITインフラ領域)をひとまず外した、残り3つのフェーズで考えます。業態的にⅡ領域はITベンダー領域と押さえて、話をシンプル化します。もっとも、ITインフラ領域でも、例えばデータ管理・処理部分はⅢのデータ解析・AI領域の前提になっていて、ⅡとⅢは連続的な関係にはあります。

 DX的なプロダクツ競争力形成の要として、「機器・システムの顧客価値高度化」と「ソリューション・サービス提供」領域を押さえている企業群である、ということを先(同「DXのデータ価値連鎖的な意味」)に述べました。これらは別個の、顧客向けプロダクツとして言っています。それと同時に、これらは不可分、相互補完の関係にあります。つまり、ソリューション・サービス概念が機器・システムに盛り込まれていることこそが、その機器システムの高度化の本質です。そして、この高度化に成功して業績につながれば(実際、好業績になっている企業が圧倒的に多い)、業績への反映が当初見えにくい「ソリューション・サービス提供」領域にもさらに力点が置けます。機器・システムから切り離した独自展開も出来てきます。そして、逆にこのようなソリューション領域展開が、機器・システム側との連続性、その必然性を高め、これら一連展開によって機器・システムの顧客価値高度化をけん引していくことにもなります。

 さらに、メーカーにとってのこの高度化の行きつくところは、そのプロダクツの中に、冒頭でひとまず外した「Ⅱ」フェーズ、つまりITインフラ、クラウドモデルも組み込んだプラットフォーム型、垂直統合型です。その中で最強モデルは、やはりオープン・プラットフォーム型です。「プラットフォーム」という言葉を同じく外部向けには使っていながら、開発段階でスタンスが大きく違う2通りの流れがあります。

 

 まず、社内での比較的閉じた開発、オールインワン志向で完成度を高めた上で、顧客・市場に出すという、オーソドックスな開発形態です。他社の類似プロダクツの機能並みは最低カバーせねば、という発想も当然働きましょう。ただこの場合、そのプラットフォームのユーザー側からみると、相対的にみて、融通性に欠け、使い勝手が良くない結果に陥ってしまうというリスクがあります。ユーザー側は、そのプラットフォームも使って自社に引き付けた主体的なDX展開を目指したい訳です。

 その点、開発過程からオープンで、つまり、プラットフォームを形成する個々の機能(構成ソフトウェア、ソリューション等)の担い手がモジュールパートナーとなって、より自在な開発プラットフォームになっている場合は、そのプラットフォームのユーザーにとっても、それらモジュール単位での活用度が高い結果、先ほど述べた「自社に引き付けた主体的なDX展開」につなげやすいという使い勝手の良さが生まれます。プラットフォーム上で最新のソフトウェア、ソリューション・モジュールの出し入れがしやすい。

 このようなオープン・プラットフォームを形成するには、幾多の最新データ解析ソフトウェアやAI、業界特有のソリューション企業の買収によって達成されるのが一般的です。個々モジュールの担い手企業は、元々1つの事業体として完結していただけに完成度が高く、当然専門知見も深い。しかも、プラットフォーム全体として、より多様なモジュールを揃えることで、多品種でしかもきめ細かいニーズへの対応も可能になる。プラットフォームの「使い勝手の良さ」を高めます。GEのPredixに代わって、産業系フラットフォームのリーダーとなったSiemensのMindSphereが代表的です。繰り返しますが、現在、大手リーディング企業でDX展開に成功している企業ほど、その突破口に先進的なDXモジュール企業の買収から入っています。

 それは、高度化された機器システムと、やはり「高度化されたITインフラ」の融合型ともとれます。高度化されたITインフラとは、通常のITインフラにデータ解析・AI機能を付加したものという意味です。高度化された機器システムに単にITインフラを加えても、つながらないことはよくあります。それは、ITインフラの担い手であるITベンダーが、現場、特にメーカーにとっての現場(製品企画・開発、製造)の知見を持ち合わせていない場合が普通だからです。その意味で、高度化されたITインフラは、そのような現場知見も持ち合わせたITベンダーによる展開です。機器システムメーカーが、自社なりのオープン・プラットフォームの形成を目指す際、そのような高度化されたITインフラベンダーとパートナーを組むのもそのためです。ハードウェアとIT・サービスの融合トレンドの最先進モデルです。

 
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